Netflix【TED】ネットフリックスがエンターテイメントを変え、目指す未来
「私は、ビジネスが好きです。競争が好きです。ディズニーやHBOに対抗したりする、それが私の原動力です。今、私はそうして、ネットフリックスの価値を高めています。そのお陰で学校へと寄付ができますから。今の人生は完璧ですよ。」
Reed Hastings - CEO of Netflix
概要
Netflixの共同創業者兼CEO、リード・ヘイスティングスが、TEDに登壇。
TEDキュレーターのクリス・アンダーソンとの対話で、ネットフリックスの歴史や社風、ユニークな機能を支えるアルゴリズム、巨額のコンテンツ投資などについて語った。
世界が注目する、ネットフリックスCEOの講演内容を、Q&A形式でシェアしていこう。
内容
Q,オリジナルコンテンツを始めたキッカケは?
A,ケーブルネットワークは常に、他人のコンテンツを放映することから始め、独自のコンテンツの制作へと展開していきました。
ですから、その原理は前から分かっていました。
実際に、私たちは2005年にオリジナルコンテンツへ参入しようとしました。
当時はDVDを使い、サンダンス映画祭から映画を仕入れていました。
しかし、規模が小さかったのでうまくいきませんでした。
その後、2011年にパートナーのコンテンツ担当者が、「ハウス・オブ・カード」に大きな期待を抱きます。
それは1億ドル規模の魅力的な投資で、HBO放送局も欲しがっていました。
※HBO放送局=アメリカで圧倒的な存在感を放つ、ケーブルテレビ局
これが当たり、最初のブレイクスルーを迎えます。
Q,新しいモデルを創り出していますね?
A,ビンジ・ビューイング(一気見)をスタートしています。
それまでのドラマは、1話づつ見られるものでしたが、全話を一気に見られるようにするという、それまでのテレビにはできないことをしました。
これも、当たりました。
Q,数字上の採算はできていたのでしょうか?
A,数字に関しては、私たちは定期購入モデルの事業なので、細かい採算は必要ありません。
私たちに必要なことは、ブランドを強化し、加入者を増やすことです。
「ハウス・オブ・カード」は、まさにその役割を果たしました。
多くの人が番組を語り合い、番組と我が社を関連づけるからです。
オリジナルドラマ以外では、このような現象は起こりませんでした。
Q,今後のコンテンツへの投資額は?
A,来年の投資額は、1億ドルではなく、全世界で80億ドル規模になります。
それだけでは、足りないほどです。
他のネットワークには、素晴らしい番組が沢山ありますからね。
Q,80億ドルは、動画配信サービス会社で最も高額なのでは?
A,ディズニーもそれぐらいです。
それに、全世界規模で使われるので、そんなに大きい規模ではないのです。
Q,ネットフリックスは、大胆かつ緻密な決断がされますね?
A,私たちの強みは、DVDビジネスとして生まれたことですが、その形態が一時的なものだと思っていました。
私たちは、100年先もレンタル業をしているとは、全く思っていませんでした。
これは会社の精神でもありますが、未来はどうなるんだろうと偏執的に考え、常に次のビジネス環境を心配しています。
Q,ネットフリックスの給料は高く、離職率は低いと聞きますが?
A,私たちの文化では、自由と責任を最も重視しています。
我が社には、最高に有能な人材と配置、オープンな社風に情報の共有など、社内では基本戦略が惜しげなく共有されています。
私たちは、反アップルです。
アップルのような分断的な社風ではなく、誰もが情報を得られるようになっています。
Q,社員が自由に休暇を取得できるとか?
A,休暇の件は、まさに象徴的です。
そのような自由裁量を、たくさん設けています。
自由と裁量を与えるほど、うまくいくのです。
他にも、怒鳴り合ったりしないような雰囲気作りをするよう、気を配っています。
好奇心こそが、人々から反応を促すものです。
Q,ネットフリックスのアルゴリズムの話は驚きでした。
A,2007年頃はエキセントリックで、WEB上でより優秀なアルゴリズムを作った人に、百万ドルを支払ったこともあります。
今では、アルゴリズムには、大規模投資をしています。
特に、利用者のコンテンツ探しの旅を、楽しく便利にすることに注力しています。
しかし、アルゴリズムが全てを判断できるわけではありません。
様々な尺度でや観点から、判断するべきです。
Q,取締役会にFacebookのマーク・ザッカーバーグがいますね?
A,彼は素晴らしく、一流の人です。
私は、彼のメンターになっています。
FacebookやYouTubeといったソーシャルプラットフォームは、明らかに急激に成長しています。
あらゆる新技術は、初めは逆境に合います。
テレビが登場した時、テレビは皆の精神を腐敗させると考えられていました。
ところが、それは杞憂であり、いくつかの改善もされてきました。
あらゆる新技術には、良い面も悪い面もあります。
ソーシャルプラットフォームは、今それを見極めています。
Q,ネットフリックスで成功してビリオネアになった今、時間とお金の多くを慈善事業に使っていますね?
A,私は大学を出て、高校の数学教師になりました。
その後、ビジネスの世界に進み、それから慈善活動家になり、教育分野を良くしたいと思いました。
私が思いついたのは、教育者同士がネットワークで繋がれ合い、たくさんのユニークな環境を子どものために作り出すことです。
私たちは、今よりもっと多様なシステムが必要であり、教育者中心の組織がもっと必要です。
もっと、子どもに合わせた教育をする学校を増えすべきです。
どの子もそれぞれのニーズがあり、決めれた教育モデルはありません。
子どもそれぞれに必要と思われる、教育の選択肢が欲しい。
しかし、それは教育者中心であるべきで、好奇心を刺激するものであるべきです。
皆、同時に同じことをする、これは明らかに産業的な退行です。
Q,この数年でどれほどの寄付をしたのですか?
A,数億ドルですよ。実際の額は覚えていませんが。
教育への投資は今も続けています。
政治の世界にも興味を持ちましたが、私は向いていませんでした。
私は、ビジネスが好きです。競争が好きです。
ディズニーやHBOに対抗したりする、それが私の原動力です。
今、私はそうして、ネットフリックスの価値を高めています。
そのお陰で学校へと寄付ができますから。
今の人生は完璧ですよ。
あなたは素晴らしい人ですね。TEDに登壇頂きありがとうございました。
感想
純粋な消費者として考えた時に、この20年で最も衝撃を受けたのが、iPhoneとNetflixだった。
初代iPhoneは、携帯電話が持ち運べるパソコンになり、高速WEBブラウジングや、次々とアプリがアップデートされていくことに、感動した記憶がある。
そして、Netflixにも大きな衝撃を受けた。
たった1000円前後で、数え切れないほどの映画を視聴することができて、さらにレコメンド機能が正確で賢いAIに感動し、デザインもクールなので虜になった。
iPhoneは、その後は他社に真似されていく運命になり、シェアが分散していく。
特に、その高価格がネックになり、イミテーションをした他社が低価格でハイスペックなスマホを量産し、シェアが分散されていった。
しかし、Netflixはとんでもない量の動画が観れるのに、1000円程度と低額だ。
大してコストがかからないので、気軽に登録できる。
昔は映画を観たくなったら、映画館に行くかTSUTAYAに借りに行ってたが、その手間がなくなった。
それだけでなく、オリジナルコンテンツまであり、そのクオリティが高い。
あまりのお得さに世界中が虜になり、その会員数はすでに1億4000万人を超えている。
1社が提供しているサービスの会員数が、日本人全体の数よりも多いということは、衝撃以外の何物でもない。
世界規模のサービスは、やはり桁が違う。
まさに、世界中の人が待ち望んでいたサービスを、提供しているということだろう。
日本では、Netflix以外にも、HuluにAmazonプライムビデオ、UNEXTやFODなど様々な動画配信サービスがある。
それぞれに魅力と特徴があって選択肢が豊富で、Netflixは首位ではないが、世界的にはNetflixが一人勝ちの様相だ。
そんな世界中のエンターテイメントを塗り替えたNetflixのCEOは、収入の半分を慈善事業に回すほどの、素晴らしい人格者だった。
画一的な教育は産業的な退行で避けるべきであり、子どもそれぞれのニーズに沿った教育を行えるよう、巨額の資金を投入している。
さらに、リード・ヘイスティングスは、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグのメンターを務めるほどの人物だ。
この講演で、リード・ヘイスティングスは起業家としても、人間としても、超一流の人物であることが理解できた。
世界で2番目に飲まれている飲料【TED】お茶の歴史
「今ではお茶は、水に次いで、世界で2番目に多く消費される飲料になっています。地球上の文化の数と同じぐらい様々な淹れ方で、お茶は飲まれています。」
Shunan Teng - Educator
概要
TEDエデュケーターのシュアン・リンの講演。
お茶の歴史について、その起源や、世界に与えた影響などについて、語ってくれた。
我々日本人にとっても興味深い、お茶の歴史について、早速シェアしていこう。
内容
聖書者であり農家のシェンノンは、食用に適する穀物やハーブを探しながら、あてもなく一日中森の中をぶらぶらした結果、72回も食中毒になりました。
しかし、彼が毒でこと切れる前に、1枚の葉っぱが口の中に吹き込んできました。
それを噛んだ彼は、元気を取り戻します。
こうしてお茶が発見されました。
お茶には、このような言い伝えがあります。
お茶は実際には解毒作用はありませんが、中国の神話的な農業の創始者であるシェノンの物語は、古代中国人にとってのお茶の重要性に光を当てています。
考古学的な証拠によると、お茶が始めて中国で栽培されたのは6000年も前、つまり、ファラオがギザのピラミッドを建てる1500年前と言われています。
初期の中国茶の木は、今日世界中で栽培されているものと同じ種類ですが、飲み方は大きく異なっていました。
その当時、お茶は野菜と一緒に消費されたり、穀物粥と一緒に調理されたりしていたのです。
1500年前になって、ようやくお茶は、食べ物から飲み物に変わりました。
熱と水蒸気が混ざると、複雑で多彩な味が葉の緑色から出てくると、人々が気づいたからです。
何百年も淹れ方を試した後に基本形となったのは、お茶を熱して持ち運びできる形に平たく固め、粉状にすり潰して熱湯を注ぎ、「むちゃ」または「抹茶」と呼ばれる飲料を作る方法でした。
抹茶はとても人気があり、中国茶文化が花開きました。
お茶は書物や詩の題材であり、皇帝のお気に入りの飲み物であり、画家にとっては表現の対象にもなりました。
画家たちは、お茶の泡に突飛な絵を描いたのです。
まさに、現代のコーヒーショップで見かける、ラテアートのようなものだったのです。
9世紀、唐の時代に、日本人の僧が初めてお茶の木を日本に持ち帰りました。
日本人は、やがてお茶にまつわる独自に儀式を発展させていきます。
これが、日本の茶道の誕生につながっているのです。
14世紀の明の時代、中国の皇帝は標準的な製法を、お茶を押して平たく固める形から、ばらけた茶葉へと変えさせました。
その時点ではまだ、中国は事実上、世界中のお茶の木を独占しており、お茶は中国にとって主要な3つの輸出品の一つになりました。
あとの2つは、磁気と絹です。
このことが、中国に多大な力と経済的影響力をもたらします。
世界中でお茶が飲まれるようになったからです。
この広がりは、オランダ人貿易商が膨大な量のお茶を、ヨーロッパに持ち込んだ1600年代前半ごろに本格的に始まりました。
ポルトガルの貴婦人だった、キャサリン・オブ・ブラガンザ王妃の功績は、広く認められています。
彼女は1661年にチャールズ2世と結婚し、イギリスの貴族社会にお茶を広めました。
その時代の英国は、植民地を広げている只中で、世界を支配する新たな勢力になろうとしているところでした。
そして、英国が拡大するにつれ、お茶に対する興味も世界中に広がります。
1700年までにヨーロッパでお茶は、コーヒーの10倍もの価格で販売され、しかも、お茶の木は中国でしか栽培されませんでした。
その後、西洋の貿易商間の激しい競争があり、世界最速の帆船であるクリッパー船が誕生しました。
お茶の貿易がとても儲かるので、みな利益を最大化するため、真っ先にヨーロッパへお茶を持って帰ろうと争ったのです。
最初は中国茶を買うのに、英国は銀で支払っていました。
高価すぎることが分かると、英国は別のもので支払うことを提案します。
アヘンです。
これで人々が麻薬に依存するようになり、中国国内で公衆衛生問題を引き起こしました。
1893年、中国の役人は兵士たちに、英国の巨大なアヘン輸送船を破壊するように命じます。
これは、英国が中国全体に及ぼす影響力に対する、抗議声明と言えるものでした。
この行為が、2国間の第一次アヘン戦争の引き金となります。
破れた清朝が、香港を英国に引き渡した1842年まで、中国の海岸で激しい攻防が繰り広げられました。
そして、不平等な関係のもと貿易が再開します。
この戦争は、1世紀もの間、中国の国際的立場を弱めました。
イギリス東インド会社は、自らお茶を栽培して、市場をさらに支配することを望みます。
そこで、植物学者のロバート・フォーチュンに、秘密裏に中国からお茶を盗み出すことを依頼します。
彼は変装して、中国のお茶を栽培している山中を危険を冒しながら進み、ついにお茶の木と経験のある労働者を、インドのダージリンまで持ち出します。
そこからさらにお茶の木は広がり、日々の嗜好品としてのお茶の急速な広がりに、拍車をかけました。
今ではお茶は、水に次いで、世界で2番目に多く消費される飲料になっています。
砂糖入りのトルコ・リゼティーから、塩の入ったチベットのバター茶まで、地球上の文化の数と同じぐらい様々な淹れ方で、お茶は飲まれています。
感想
お茶の歴史は非常に古く、ファラオがピラミッドを建設する前、6000年前にもさかのぼるという。
その後、お茶は飲料としてではなく、食べ物として調理されていたらしい。
今では考えにくいが、確かにお粥などに入れると、効用がありそうだ。
そして、1500年前から飲み物として愛されるようになり、9世紀に日本に渡る。
外国のものをアレンジするのが得意な日本人は、お茶を日本独自の茶道として、独自に発展させていく。
しかし、画家が抹茶の泡で絵を描いていたという話は面白い。
それは今のラテアートは、この時代のイミテーションなのかと考えさられる。
ここまでは平和だったが、イギリスが絡んだことでトラブルが起こる。
高価格で独占状態だったお茶の代金を、イギリスはアヘンで支払うことにした。
これがアヘン戦争の引き金になり、中国は香港を占領されてしまう。
人をリラックスさせるお茶が、戦争を引き起こすのだから、人間がいかに愚かだったのか、歴史を振り返ると分かる。
しかし、イギリスが中国から盗み出したお茶が、インドのダージリンに渡り、ダージリンティーが生まれ、それを世界中の人が飲んでいるのだから、なかなかシュールな話だ。
戦争などのトラブルがあったからこそ、茶は急速に世界中に広まり、世界各地で独自の発展を遂げ、今では世界中で水の次に飲まれている飲料になっている。
お茶には、世界中の人を虜にするほどの魅力があるのか、それとも、戦争を生み出すほどの魔力があるのか。
一つだけ確かなことは、お茶は美味しいということだ。
歴史上最大の未解決ミステリーの一つ【TED】世界最大の謎の本
「ヴォイニッチ手稿は、歴史上最大の未解決ミステリーの一つです。その理由は、誰も内容を解読できないからです。」
概要
TEDエデュケーターの、スティーブン・バックスが講演。
歴史上最大の未解決の謎の一つ、世界最大の謎の本について語った。
それでは早速、この不思議なミステリーをシェアしよう。
内容
イエール大学のバイネキー希少本、原稿図書館の奥深くに、240ページからなるただ1冊しかない本が収蔵されています。
最近、放射性炭素年代測定で、1420年代のものと判明した羊皮紙でできたその本には、手書きの丸文字のようなものや、夢をそのまま描いたような手書きのイラストがあります。
現実と空想の植物、浮遊する城、入浴する女性達、占星術チャート、星座の指輪、顔のある太陽と月が文章とともに書かれています。
その文章も、謎の言語で書かれています。
この24×16センチの本は、「ヴォイニッチ手稿」と呼ばれており、これは歴史上最大の未解決ミステリーの一つです。
その理由は、誰も内容を解読できないからです。
本の名前は、ウィルフリッド・ヴォイニッチ氏に由来します。
ポーランド人で書籍商の彼が、この本をあるイエズス会の大学で見つけたのです。
1912年、イタリアでのことです。
彼は当惑しました。
誰が書いたのか?
何処で作られたのか?
この変な文字は何語で、ゾクゾクする絵は何を意味しているのか?
どんな秘密が隠されているのか?
彼は、大学で資金難にあえぐ司祭からこの本を買い受け、最終的にアメリカに持ち込みました。
アメリカの専門家達は、1世紀以上もの間、思案し続けました。
暗号学者は、この文書は実存する言語のすべての特徴を有しており、ただ誰も見たことがない言語だと言うのです。
なぜ実在の言語に見えるかというと、実際の言語では、同じ文字の並びが一定の頻度で出てきますが、ヴォイニッチ手稿の言語でも無作為に並べたとは思えないパターンがあるのです。
それ以外では、見える以上のことはほぼ分かりません。
文字はスタイルや高さに違いがあり、他の言語から借りてきている文字もありますが、多くは独自のものです。
手稿は全体を通して渦巻き状の美しい装飾で、飾り付けられています。
2人か、それ以上の人によって書かれているようで、絵は別のグループによるものです。
長年を経て、手稿の文章について3つの説が出てきました。
1番目は、暗号で書かれているという説で、秘密を隠すためにあえて考えられた、秘密の暗号というわけです。
2番目は、虚偽の文章で、騙しやすい買い手から金儲けをするために、デタラメに書かれたという説です。
著者は中世のペテン師だと推測する者もいれば、ヴォイニッチ自身が書いたという者もいます。
3番目の説は、本文は実存する言語であるが、誰も知らない文字で書かれているというものです。
中世の学者達は、新しいアルファベットを使って、無文字言語に使おうとしていたのかもしれません。
その場合、ヴォイニッチ手稿は、ロンゴロンゴ文字のようなものかもしれません。
ロンゴロンゴ文字は、イースター島で使われていて、その文化が崩壊した今となっては読解不能の文字です。
ヴォイニッチ手稿は、誰も読むことができないにも関わらず、何が書かれているのか、人は探求せずにはいられません。
この手稿は新しい文字言語を作ろうと試みたものだ、そう信じている人たちは、手稿を作った文化の知識が詰まった、百科事典なのかもしれないと考えています。
13世紀の哲学者、ロジャー・ベーコンによって書かれたと信じる人もいます。
彼は、文法の普遍的法則を研究していました。
あるいは、16世紀エリザベス朝の神秘家、ジョン・ディーの作だという人もいます。
他には、イタリアの魔女によって書かれたとか、火星人が書いたという人さえいます。
100年の試行錯誤の後、科学者達は最近、このミステリーに微かな手がかりを得ました。
最初の発見は、1420年代頃と判明した、先ほどの放射性炭素年代測定です。
また、歴史家達は、この本の来歴を追跡しました。
この手稿は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世から、彼の医師であるヤコブス・シナプスに渡ったとされています。
これらの歴史的発見に加えて、言語学者達は最近、手稿に書かれた単語のいくつかを特定したと言っています。
星座や植物の名前が、読解でき始めています。
しかし、進展はゆっくりです。
もし暗号を解明できたら、何を発見できるでしょうか?
全くのたわごと?
忘れられた文明の失われた叡智?
あなたはなんだと思いますか?
感想
言語学者、歴史学者、さらに世界大戦でも活躍した暗号解読者でも 解読不能な本、ヴォイニッチ手稿。
解読不能な文字で書かれていて、実在しない生物が書かれている、とんでもなく謎の本だ。
興味深さと同時に、ちょっとした恐怖も感じる、まさにミステリーの世界になっている。
物凄い創造力の持ち主が描き上げたファンタジーかもしれないし、新しい言語と世界を生み出そうとしたのかもしれない。
謎は深まるばかり。
どう感じるかは、あなた次第だ。
際限なく楽しめる画面【TED】なぜ画面を見ていると幸せから遠のくのか
「人生を終わる手前でそれまでの人生を振り返って、どうだったか考えた人が語るのは結局、自分の自由時間に起こったことでしょう。」
Adam Alter - Psychologist
概要
心理学者のアダム・オルターが、TEDに登壇。
彼は、画面が私たちの時間をどれほど奪っているか、そしてそれをどんな時間にしているかについて語った。
早速、現代人に響くこの内容をシェアしよう。
内容
数年前に面白い噂を耳にしました。
あるペット・フード会社の社長は、定時株主総会に出席する時は、ドッグフードを持参し、それを食べていたというのです。
自分が食べても良いのだから、ペットにも良いはずだと。
株主を説得したかったんですね。
今ではこの戦略は「ドッグ・フーディング」と呼ばれ、ビジネスの世界ではよく使われています。
これはよく使われていますが、面白いのが、このケースに当てはまらない場合です。
会社や社員が、自社商品を使わないケースです。
特に有名なのが、電子機器の画面にかかわる、テクノロジー業界です。
2010年にスティーブ・ジョブズがiPadを世に送り出したとき、iPadを「並外れた」デバイスだと表現し、こう語っています。
「最高のWebブラウジングを提供します。ノートパソコンやスマートフォンよりも、素晴らしい体験ができます。」
しかし、NYタイムズの記者から取材を受けた際に、最後にこんな質問を受けます。
「お子さん達は、さぞiPadをお気に入りでしょう?」
答えはもう分かりきっていましたが、予想と全く違う答えが返ってきました。
「子ども達はiPadを使っていないんだ。うちではテクノロジーを使う時間を制限しているからね。」
シリコンバレーのすぐそばの学校でも、中学2年生までコンピューターを使いません。
興味深いのが、その学校に通う75%が、シリコンバレーにある優良ハイテク企業の幹部を親に持つことです。
私はこの話に興味を持ち、電子機器の画面が、私たちにどんな影響を与えるかを、深く考え始めました。
そしてこの5年間、私はビジネスと心理学の教授として、画面が日々の生活に与える影響を研究しました。
まずは、私たちは過去と現在で、どのように時間を使ってきたかを調べました。
昔も今もあまり変わらず、睡眠時間は8時間程度で、労働時間は10時間程度、そして生存するための食事や入浴が3時間程度、残りの時間が個人の時間になっています。
自分らしくいられるこの時間で、趣味をしたり、人との絆を深めたり、人生について思いを巡らしたり、創造的な活動をしたりします。
一歩下がって人生を見つめ直し、有意義に過ごしてきたか考えたりもします。
仕事で自分らしくいられる場合もありますが、人生を終わる手前でそれまでの人生を振り返って、どうだったか考えた人が語るのは、結局、自分の自由時間に起こったことでしょう。
さて、それでは画面がどれぐらい時間を取っているのか見てみましょう。
初代iPhoneが発売された2007年、その時間は1時間程度でした。
しかし、2015年になると、画面を見る時間が倍増し2時間近くになります。
そして2017年には、ほとんどの自由時間、つまり3時間ほど、画面を見ることになります。
残りのわずかな時間が、素敵なものが生まれる時間、人間らしくいられる時間になってしまっています。
画面には良い面もたくさんあります。
しかし、スマホの情報やアプリには、やめどきがないものもあります。
次から次に情報が入り、延々と遊べるものがあります。
20世紀には、やめどきのあるものがありました。
やめるきっかけがあると、次に進む時間や、何か新しいこと、違うことをする時間だと気づきます。
新聞や雑誌、本、そしてテレビなどは終わりがあります。
やめるきっかけは、どこにでもありました。
でも、今のメディアはやめどきがありません。
Facebook、Twitter、Instagram、ニュース、情報、すべてが底なしで際限がありません。
デバイスから離れるためには、ルールを決める必要があります。
私のルールは、「食事の時はスマホを使わない」ことです。
人は誘惑に負けやすいので、スマホは出来るだけ遠くに置きます。
最初は苦痛ですが、そのうち慣れます。
ドラッグと同じで、禁断症状を克服すれば、そこにはもっと色鮮やかで豊かで面白い、そんな世界が待っています。
その場を共有している人たちと、深くつながることができます。
画面は素晴らしいものですが、私たちは長い道路を全速力で走り抜けるように、常に画面を使っています。
まるで、アクセルを思いっきり踏み込み、ブレーキペダルに足が届かないほどです。
私たちは、選ぶことができます。
美しい海景色を滑らかに走り去りながら、窓から写真を撮って終わりにするか。
あるいは道を外れて、車を路肩に移動させ、ブレーキを踏み外へ出て、靴や靴下を脱いで砂浜を歩き、足首まで海に浸かるかです。
このほうが、より豊かで意義深い人生を歩めるでしょう。
その経験の中で、息をしているのですから。
感想
スティーブ・ジョブズが、自分の子どもにiPadの利用を控えさせていたという事実が、興味深い。
心理学者のアダム・オルターの講演内容が、より響いてくる。
確かに、iPhoneがない頃は、今ほど画面に縛られていなかった。
テレビは観ていたが、いつも終わりがあり、番組が終わったら他のことをしていた。
しかし、スマホには終わりがない。
現代は、SNSやYouTube、ネットサーフィンなど、延々と画面で楽しむことができる。
だからこそ、ふと気づいた時には、時間が無駄になっていることが多い。
不幸ではないが、幸福でもない時間。
そんな時間は思い出には残らないし、死ぬ時に思い出すこともないだろう。
この時間に浸りすぎると、人生がもったいない。
スマホは本当に制限したほうが良さそうだ。
そして、リアルで記憶に残るような体験を増やそう。
楽しい思い出はいつだって、リアルで感情を動かすような記憶だ。
【TED】ジェットコースターは人体にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
「人体の限界に関する正確な知識が、より速く高く宙返りの多い、ジェットコースター作りに役立っています。」
Brian Avery - Educator
概要
TEDエデュケーターのブラインアン・エイブリーが登壇。
ジェットコースターの変遷と、人体に与える影響、そしてジェットコースターがどのように設計されているかについて語った。
それでは早速、その内容をシェアしよう。
内容
1895年夏、ニューヨーク州コニーアイランドにある遊歩道は、驚異のジェットコースター技術を一目見ようとする人で、溢れ返っていました。
「Flip Flap Railway」です。
これは、アメリカ初の宙返りができるジェットコースターでしたが、スリル満点の宙返りは代償を伴いました。
ジェットコースターの多くの乗客が、深刻なむち打ちや、首の怪我をしたり、放り出されたりする問題も起きました。
すべてが、自慢の宙返りによるものでした。
現在のジェットコースターは、病院に搬送されるリスクに訴えることなく、遥かに興奮する仕掛けを作ることができます。
しかし、ジェットコースターは人体にどのような影響を及ぼし、どのように恐怖感と安全性を同時に得ているのでしょうか?
あらゆるジェットコースターの設計の核となるのは、重力です。
車や電車とは違い、ジェットコースターはレールの上を、ほぼ重力エネルギーのみで進みます。
ジェットコースターが最初の坂を引き上げられると、巧妙に設計されたサイクルが始まります。
上り坂で位置エネルギーを蓄え、下り坂で運動エネルギーへと変換します。
このリズムが全コースを通して繰り返され、ジェットコースター設計士が振り付けた、重力エネルギーのダンスを表します。
しかし、このサイクルには、十分に考慮されなかった重要な要素があります。
それは、あなたです。
「Flip Flap Railway」があった当時、設計士が最も重視したのは、ジェットコースターの途中停止を避けることでした。
初期の設計者はそのことを過度に重視し、下り坂では物凄い勢いをつけて進み、ゴールで急ブレーキをかけたのです。
しかし、重力が車両に影響を与えるのと同時に、乗客にも影響を与えます。
ジェットコースターの強烈な条件下では、重力の影響は強まります。
宇宙飛行士やジェットコースター設計士の間で使われる共通の単位に、「Gフォース」というものがあります。
1Gは、地上で感じている重力によって引き寄せられる身近な力で、これは地球の重力が私たちの体を引き寄せている力です。
しかし、乗車中に加速したり減速したりすると、乗客は重力をより強く、もしくはより弱く感じます。
現代のジェットコースター設計士は、人体が約5Gまで耐えられることを知っていますが、「Flip Flap Railway」やその時代のものは約12Gまで達していることが当たり前でした。
このレベルの重力を受けると、血液は脳から足に急速に流れ、目眩や一時的な記憶喪失に繋がります。
また、宙返りになっている状態では、頭部に血液がどっと流れ込み、視界が深紅色になる「レッドアウト」という症状を引き起こします。
それとは逆に、マイナスGは無重力状態を作り出します。
体内の一時的な無重量状態はほぼ無害ですが、平衡感覚をつかさどる役割を担っている内耳にある液体が浮くと、乗り物酔いを引き起こします。
しかし、より大きなリスクは、設計士が「エアタイム」と言うものから生じます。
これはお尻が座席から離れることであったり、放り出されてしまったりすることです。
現在のジェットコースターは様々な安全ベルトやバーで、この問題は大幅に解決されましたが、耐えず変化する乗客の姿勢が、どの部分を固定する必要があるのか判断を難しくします。
幸運にも、現在の設計士は、人体とジェットコースターが耐えられることを熟知しています。
設計士はこれらの相反する力を操り、強い圧力がかかった時の影響を、全く圧力がかかってない時に緩和しています。
加えて、プラスからマイナスGへ急激に転換するときに、むち打ちや頭痛、腰や首への痛みが生じるので、かつてのスリリングなジェットコースターに共通していたスピードや方向の急激な変化を無くしています。
現代のジェットコースターはより頑丈で、重力に耐えられる数値を、厳密に考慮しています。
5Gの負荷がかかると、体は5倍の重さを感じます。
仮に、体重が50kgだった場合、ジェットコースターには250kgの重さが加わります。
設計士がジェットコースターの支柱を設計する場合、各乗客の重さを何倍かしたものを、計算に入れなければいけません。
現代のジェットコースターでも、まだ万人向けではありません。
アドレナリンの放出や目眩や乗り物酔いは、すぐには無くなりそうにありません。
しかし、最新の3Dモデリングやシミュレーションソフトの使用により、さらに安全でスリルのあるものを作れるようになりました。
人体の限界に関する正確な知識が、より速く高く宙返りの多い、ジェットコースター作りに役立っています。
感想
宙返りのジェットコースターが世界で初めて完成した1895年、Flip Flap Railwayは人体が耐えられる5Gの2倍以上、葯12Gで走行していたというから恐ろしい。
100年前の設計士は、人体が耐えられる重力さえ、理解していなかった。
スリルを超えて、首の怪我やむち打ち、そして放り出されたりまでしていたらしい。
これでは、ジェットコースターでなく、デットコースターだ。
ゴール地点で荒々しく急ブレーキをかけていたというのも、危険極まりない。
100年前の話と聞くと、なんとなく想像できてしまう。
一方、現代のジェットコースター設計士は人体を熟知して、より安全でスリルのあるものが出来上がっている。
この分野に関しては、技術革新の効果が非常に高い。
誰だって、ジェットコースターで不幸な目に合いたくない。
単なる娯楽で、完全なエンターテイメントでなくてはならない。
時代が進むほど、より安全で、より快適な環境が整っていく。
生物には寿命に差がある【TED】なぜ動物の寿命はそれぞれ異なるのか?
「平均寿命を伸ばすための管理や手段により、私たち人間はおそらく地球上で唯一、生まれながらの死をコントロールできる種となったのです。」
Joao Magalhaes - Educator
概要
顕微鏡サイズの虫は数週間、ホッキョククジラは200年以上と、生物の寿命には差がある。
なぜ生物間で老化の速度に差があり、寿命が違うのだろうか?
早速、その答えをシェアしていこう。
内容
研究でよく使われる顕微鏡サイズの線虫C.エレガンスは、数週間でその一生を終えます。
100年以上生きるカメとは対照的です。
マウスとラットが4年で寿命に達するのに対し、地球の哺乳類の中で最も寿命が長いホッキョククジラは、200年を超えて死を迎えることもあります。
ほとんどの生物と同様に、大半の動物は性的成熟に達した後、徐々に衰えていき、その過程は「老化」と呼ばれます。
では、老化とはどういう意味でしょうか?
この過程を引き起こす要因は多様で複雑ですが、最終的に老化は、細胞死と機能障害によって起こります。
私たちは若いうちに絶えず細胞を再生することで、死んだ細胞や死にかけた細胞を取り替えます。
しかし、年を取るごとにこのプロセスは遅くなります。
さらに、古い細胞は新しい細胞のようには上手く機能を果たせなくなり、私たちの身体は衰退し、結果的に病気や死をもたらします。
しかし、これが一貫した真実なら、なぜ動物界には老化パターンと寿命にこれほど違いがあるのでしょうか?
その背景にはいくつかの要因が関係しており、環境や身体の大きさもその一つです。
これらの要因が、動物たちに適応するための強力で進化的な圧力をかけ、種の間で老化プロセスに違いを生み出します。
大西洋や北極海の冷たく深い海を例にすると、そこに住むニシオンデンザメは400歳以上、北極海に住むホンビノスガイは、500歳まで生きられます。
恐らく、これらの海に棲む古代生物の中で最も印象的なのは、南極に棲むガラス海綿体で、極寒の海の中で1万年も生き延びることができます。
このような冷たい環境では、心拍や代謝率は低下し、それもまた心拍数を遅らせると研究者は考えています。
その影響で、長寿になると考えられています。
身体の大きさに関しては必ずではありませんが、大抵、大型種のほうが小型種よりも長生きします。
例えば、ゾウやクジラは、ラットやハタネズミより長生きし、また、これらの生き物はハエや虫より遥かに長生きします。
小型種の生物は、細胞分裂の仕組みによって制約を受けています。
これらの動物のほとんどの細胞は、損傷を受けても分裂や置き換えが不可能であるため、体が長く持たないのです。
また、身体の大きさは動物において、強力な進化の推進要因です。
小型の生物は捕食されやすく、例えば、マウスは野生で1年さえも生き延びることができません。
そのため、より早く成長し繁殖し、短い寿命に対抗するように進化しています。
一方で、大型動物は捕食を回避することに優れているので、大きく成長するための時間の余裕ができ、一生の間に複数回繁殖することができます。
コウモリや鳥、モグラ、カメなどは例外で、身体が大きくなくても捕食動物から逃げられます。
他には、脅威に関する細胞の反応の違いなども、老化に影響します。
これらすべての要因が、それぞれの動物に異なる度合いで組み合わさり、動物界の多様性を生み出しています。
現在、人間の平均寿命は71歳で、地球上の最長寿命の生物になるにはほど遠いのです。
しかし、私たちは平均寿命を伸ばすのに長けています。
1900年代初頭、人間の寿命は平均して50歳ほどでした。
それ以来、多くの死を招く要因を管理することで、人間は適応してきました。
平均寿命を伸ばすための管理や手段により、私たち人間はおそらく地球上で唯一、生まれながらの死をコントロールできる種となったのです。
感想
生物の寿命に影響しているのは、環境の違い、身体の大きさの違い、そして細胞の反応の違いの3つだ。
深海に生息する生き物は、冷たい環境で心拍が低下し心拍数が下がり、長寿になりやすい。
人間より遥かに大きなホッキョククジラは、寿命が人間の2.5倍近くある。
また、細胞が再生する生物は、寿命が長くなる。
個人的には、深海生物の心拍の話が面白く、特に印象的だった。
確かに、研究などでよく使われているラットを見ると、常にちょこまかと動いている。
いつも動き回っているラットの光景を思い返してみたところ、ふと思った。
生物は、動けば動くほど心拍数が上がり、寿命が短くなるのではないだろうか?
そして、これはもしかしたら、人間にも当てはまるかもしれない。
運動量の多すぎるアスリートや、働き過ぎるハードワーカーは、短命になる傾向がある。
健康的なスポーツであるランニングの弊害は、心拍数の増加だという話がある。
人間の生涯心拍数は、決まっているという話も聞いたことがある。
完全に個人的主観だが、せかせかと動き回ることで、生き急ぐことになってしまうかもしれない。
早死にするつもりは毛頭ない。
急ぐのもいいが、適度にゆったりとくつろぎ、人生を末長く楽しもう。
古代から人間と共存してきたニワトリ【TED】ニワトリから見た歴史
「戦士や神へのお供え物から、旅のお供や研究材料に至るまで、ニワトリは何世紀にもわたって様々な役割を担ってきました。ニワトリの興味深い歴史は、私たち人間の歴史についても語っているのです。」
Chris Kniesly - Educator
概要
TEDエデュケーターのクリス・A・ナイスリーが登壇。
ニワトリの歴史から見る、人類の歴史について語ってくれた。
人間の歴史と、ニワトリの歴史は、紀元前7000年頃から繋がっているという。
早速、その興味深い内容をシェアしよう。
内容
古代エジプト王トトメス3世に関する資料によると、「毎日卵を産む素晴らしい外国の鳥」について記述しています。
世界最古の宗教であるゾロアスター教の信者たちは、この鳥のことを、この世の闇と光の抗争を告げる霊であると考えていました。
ローマ人は、戦いの際にはこの鳥を、戦争の勝敗を予知するものとして連れて行きました。
今日、ニワトリは未だに、重要な役割を果たしています。
しかし、崇拝される立場ではなく、食卓で。
現在のニワトリは主に、「セキシャクヤケイ」と呼ばれる鳥と、部分的にはインドや南東アジアに固有の、3つの近縁の種の血統を引き継いでいます。
この地域で育つ竹は、数十年に一度だけ、大量の実をつけます。
セキシャクヤケイの毎日卵を産む能力は、竹のこの稀な特徴を利用し、食料が豊かな時に個体数を増やすように進化したのかもしれません。
ニワトリは飛行能力が低く、飼育に広い場所を必要としないので、簡単に捕まえて閉じ込めることができました。
家畜化された最古のニワトリは、少なくても7000年前までさかのぼります。
その当時は、食用としてではなく、闘鶏が人気のエンターテイメントでした。
紀元前2000年ごろまでに、ニワトリはインダス谷から中国へ、そして中東へと広がり動物の王に君臨し、宗教儀式にも使われました。
しかし、エジプトで、ニワトリの新しい歴史が始まります。
雌鶏が卵を抱いている間、雌鶏は新しい卵を産むことはなく、6個かそれ以上の卵をつかんだ状態で21日間座り続けます。
紀元前1000年頃、エジプト人たちは、ニワトリの卵を人工的に孵化させる方法を発見しました。
バスケットの上に卵を入れて、熱い灰の上に置いておくのです。
これによって雌鶏は毎日卵を温めることから解放され、高貴に扱われる存在、つまり祭祀用としての存在から、一般的な食料になりました。
その頃、フェニキア人の商人がニワトリをヨーロッパに広めます。
すると、ニワトリは瞬く間にヨーロッパ人の家畜として、必要不可欠な存在になりました。
しかし長い間、高貴な立場にあるニワトリも、食用のニワトリと同時に存在し続けたのです。
ローマ人はニワトリに神託を求めましたし、7世紀までは、ニワトリはキリスト教の象徴とされてきました。
それから数世紀の間、ニワトリは人間がどこに行こうともお供して、世界中へ広がったのです。
貿易や征服、そして植民地化を通してです。
近年では、ニワトリの生産は産業的、工業的なビジネスモデルへと変遷します。
そして、ニワトリは紙一枚分のスペースにも満たない中で、育てられるようになりました。
現在では、動物の権利や環境への配慮を考え、平飼いをする傾向になってきていますが、ほとんどの国では220億ものニワトリが養鶏場で育てられています。
戦士や神へのお供え物から、旅のお供や研究材料に至るまで、ニワトリは何世紀にもわたって様々な役割を担ってきました。
ニワトリの興味深い歴史は、私たち人間の歴史についても語っているのです。
感想
ニワトリの歴史がここまで古いとは、知らなかった。
人類の歴史が始まるころから、ニワトリは存在していた。
そのため、ニワトリの歴史を振り返ることで、人間を歴史を振り返ることができる。
ニワトリの歴史を振り返ると、古来は崇拝される存在だったが、現在は食用として家畜化されている。
変わっていないのはニワトリで、変わっているのが人間だけだ。
人間が勝手に神格化したり、宗教の象徴にしたり、家畜化したりしている。
人間に翻弄され続けるニワトリも気の毒だが、綺麗事抜きの現実問題として、日々美味しく頂けることに感謝したい。
しかし、動くスペースのない環境で卵を産むためだけに飼育されるのはさずがに残酷なので、養鶏場はできる限り平飼いにして欲しい。
こういうことを知ると、動物の権利や環境保護の大切さが理解できる。
それにしても、世界中にいるニワトリの数は220億という数字が衝撃的だ。
すでに世界人口の75億人を遥かに超えている。人間の3倍の数だ。
人間によって強制的に繁殖させられているのだろうが、それにしても凄まじい。
古くから共存してきたニワトリの生命力、そして圧倒的な繁殖力は、尋常じゃない。
闘鶏としても使われていたこともあり、そのエネルギーは計り知れないものがある。
鳥の歴史は1億年もあり、人間の歴史の数百万年を遥かに超えているらしい。