Netflix【TED】ネットフリックスがエンターテイメントを変え、目指す未来
「私は、ビジネスが好きです。競争が好きです。ディズニーやHBOに対抗したりする、それが私の原動力です。今、私はそうして、ネットフリックスの価値を高めています。そのお陰で学校へと寄付ができますから。今の人生は完璧ですよ。」
Reed Hastings - CEO of Netflix
概要
Netflixの共同創業者兼CEO、リード・ヘイスティングスが、TEDに登壇。
TEDキュレーターのクリス・アンダーソンとの対話で、ネットフリックスの歴史や社風、ユニークな機能を支えるアルゴリズム、巨額のコンテンツ投資などについて語った。
世界が注目する、ネットフリックスCEOの講演内容を、Q&A形式でシェアしていこう。
内容
Q,オリジナルコンテンツを始めたキッカケは?
A,ケーブルネットワークは常に、他人のコンテンツを放映することから始め、独自のコンテンツの制作へと展開していきました。
ですから、その原理は前から分かっていました。
実際に、私たちは2005年にオリジナルコンテンツへ参入しようとしました。
当時はDVDを使い、サンダンス映画祭から映画を仕入れていました。
しかし、規模が小さかったのでうまくいきませんでした。
その後、2011年にパートナーのコンテンツ担当者が、「ハウス・オブ・カード」に大きな期待を抱きます。
それは1億ドル規模の魅力的な投資で、HBO放送局も欲しがっていました。
※HBO放送局=アメリカで圧倒的な存在感を放つ、ケーブルテレビ局
これが当たり、最初のブレイクスルーを迎えます。
Q,新しいモデルを創り出していますね?
A,ビンジ・ビューイング(一気見)をスタートしています。
それまでのドラマは、1話づつ見られるものでしたが、全話を一気に見られるようにするという、それまでのテレビにはできないことをしました。
これも、当たりました。
Q,数字上の採算はできていたのでしょうか?
A,数字に関しては、私たちは定期購入モデルの事業なので、細かい採算は必要ありません。
私たちに必要なことは、ブランドを強化し、加入者を増やすことです。
「ハウス・オブ・カード」は、まさにその役割を果たしました。
多くの人が番組を語り合い、番組と我が社を関連づけるからです。
オリジナルドラマ以外では、このような現象は起こりませんでした。
Q,今後のコンテンツへの投資額は?
A,来年の投資額は、1億ドルではなく、全世界で80億ドル規模になります。
それだけでは、足りないほどです。
他のネットワークには、素晴らしい番組が沢山ありますからね。
Q,80億ドルは、動画配信サービス会社で最も高額なのでは?
A,ディズニーもそれぐらいです。
それに、全世界規模で使われるので、そんなに大きい規模ではないのです。
Q,ネットフリックスは、大胆かつ緻密な決断がされますね?
A,私たちの強みは、DVDビジネスとして生まれたことですが、その形態が一時的なものだと思っていました。
私たちは、100年先もレンタル業をしているとは、全く思っていませんでした。
これは会社の精神でもありますが、未来はどうなるんだろうと偏執的に考え、常に次のビジネス環境を心配しています。
Q,ネットフリックスの給料は高く、離職率は低いと聞きますが?
A,私たちの文化では、自由と責任を最も重視しています。
我が社には、最高に有能な人材と配置、オープンな社風に情報の共有など、社内では基本戦略が惜しげなく共有されています。
私たちは、反アップルです。
アップルのような分断的な社風ではなく、誰もが情報を得られるようになっています。
Q,社員が自由に休暇を取得できるとか?
A,休暇の件は、まさに象徴的です。
そのような自由裁量を、たくさん設けています。
自由と裁量を与えるほど、うまくいくのです。
他にも、怒鳴り合ったりしないような雰囲気作りをするよう、気を配っています。
好奇心こそが、人々から反応を促すものです。
Q,ネットフリックスのアルゴリズムの話は驚きでした。
A,2007年頃はエキセントリックで、WEB上でより優秀なアルゴリズムを作った人に、百万ドルを支払ったこともあります。
今では、アルゴリズムには、大規模投資をしています。
特に、利用者のコンテンツ探しの旅を、楽しく便利にすることに注力しています。
しかし、アルゴリズムが全てを判断できるわけではありません。
様々な尺度でや観点から、判断するべきです。
Q,取締役会にFacebookのマーク・ザッカーバーグがいますね?
A,彼は素晴らしく、一流の人です。
私は、彼のメンターになっています。
FacebookやYouTubeといったソーシャルプラットフォームは、明らかに急激に成長しています。
あらゆる新技術は、初めは逆境に合います。
テレビが登場した時、テレビは皆の精神を腐敗させると考えられていました。
ところが、それは杞憂であり、いくつかの改善もされてきました。
あらゆる新技術には、良い面も悪い面もあります。
ソーシャルプラットフォームは、今それを見極めています。
Q,ネットフリックスで成功してビリオネアになった今、時間とお金の多くを慈善事業に使っていますね?
A,私は大学を出て、高校の数学教師になりました。
その後、ビジネスの世界に進み、それから慈善活動家になり、教育分野を良くしたいと思いました。
私が思いついたのは、教育者同士がネットワークで繋がれ合い、たくさんのユニークな環境を子どものために作り出すことです。
私たちは、今よりもっと多様なシステムが必要であり、教育者中心の組織がもっと必要です。
もっと、子どもに合わせた教育をする学校を増えすべきです。
どの子もそれぞれのニーズがあり、決めれた教育モデルはありません。
子どもそれぞれに必要と思われる、教育の選択肢が欲しい。
しかし、それは教育者中心であるべきで、好奇心を刺激するものであるべきです。
皆、同時に同じことをする、これは明らかに産業的な退行です。
Q,この数年でどれほどの寄付をしたのですか?
A,数億ドルですよ。実際の額は覚えていませんが。
教育への投資は今も続けています。
政治の世界にも興味を持ちましたが、私は向いていませんでした。
私は、ビジネスが好きです。競争が好きです。
ディズニーやHBOに対抗したりする、それが私の原動力です。
今、私はそうして、ネットフリックスの価値を高めています。
そのお陰で学校へと寄付ができますから。
今の人生は完璧ですよ。
あなたは素晴らしい人ですね。TEDに登壇頂きありがとうございました。
感想
純粋な消費者として考えた時に、この20年で最も衝撃を受けたのが、iPhoneとNetflixだった。
初代iPhoneは、携帯電話が持ち運べるパソコンになり、高速WEBブラウジングや、次々とアプリがアップデートされていくことに、感動した記憶がある。
そして、Netflixにも大きな衝撃を受けた。
たった1000円前後で、数え切れないほどの映画を視聴することができて、さらにレコメンド機能が正確で賢いAIに感動し、デザインもクールなので虜になった。
iPhoneは、その後は他社に真似されていく運命になり、シェアが分散していく。
特に、その高価格がネックになり、イミテーションをした他社が低価格でハイスペックなスマホを量産し、シェアが分散されていった。
しかし、Netflixはとんでもない量の動画が観れるのに、1000円程度と低額だ。
大してコストがかからないので、気軽に登録できる。
昔は映画を観たくなったら、映画館に行くかTSUTAYAに借りに行ってたが、その手間がなくなった。
それだけでなく、オリジナルコンテンツまであり、そのクオリティが高い。
あまりのお得さに世界中が虜になり、その会員数はすでに1億4000万人を超えている。
1社が提供しているサービスの会員数が、日本人全体の数よりも多いということは、衝撃以外の何物でもない。
世界規模のサービスは、やはり桁が違う。
まさに、世界中の人が待ち望んでいたサービスを、提供しているということだろう。
日本では、Netflix以外にも、HuluにAmazonプライムビデオ、UNEXTやFODなど様々な動画配信サービスがある。
それぞれに魅力と特徴があって選択肢が豊富で、Netflixは首位ではないが、世界的にはNetflixが一人勝ちの様相だ。
そんな世界中のエンターテイメントを塗り替えたNetflixのCEOは、収入の半分を慈善事業に回すほどの、素晴らしい人格者だった。
画一的な教育は産業的な退行で避けるべきであり、子どもそれぞれのニーズに沿った教育を行えるよう、巨額の資金を投入している。
さらに、リード・ヘイスティングスは、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグのメンターを務めるほどの人物だ。
この講演で、リード・ヘイスティングスは起業家としても、人間としても、超一流の人物であることが理解できた。