衝撃の事実【TED】ファッション業界のゴミ問題への3つの解決策
「アメリカでは、毎年生産される布地や衣服の15%ほどしか、寄付されたりリサイクルされたりせず、残りの85%の布地や衣服は、ゴミとして廃棄され、埋め立てられます。」
Amit Kalra
概要
アメリカのファッション業界で働くアミット・カルラが、TEDに登壇。
ファッション業界が生み出す、途方もない廃棄物問題について、解決策を提示した。
地球環境とファッション業界への愛に溢れた内容を、早速紹介しよう。
内容
数年前、私が若い頃、お金をかけずにファッションを楽しむ方法を探していました。
自然と行き着いたのは、古着屋でした。
他人にとってはゴミのようなものでも、私にとっては宝物が眠る場所だったのです。
私が探していたのは、よくあるヴィンテージのTシャツではありません。
私にとってのお洒落は、デザイン性と個性の融合です。
掘り出し物を十分に生かすために、ミシンを買って、見つけた90年代の服を、現代のスタイルに作り替えました。
それ以来、自分の服は自分で作っているので、クローゼットの中身は全部オリジナルです。
ある時ふと思ったのが、古着屋で私が買わない服はどうなるのだろうということです。
私はファッション業界の卸売をしているので、ウチが扱っているのような商品が、古着屋に行き着くこともあります。
私が抱いた疑問は、仕事にも繋がりました。
調べてみると、私が古着屋でかき分けていた服は、全体の一部に過ぎないことが分かりました。
アメリカでは、毎年生産される布地や衣服の15%ほどしか、寄付されたりリサイクルされたりせず、残りの85%の布地や衣服は、ゴミとして廃棄され、埋め立てられます。
85%という数字は、1300万トンもの規模になります。
平均すると、1人あたり200枚のTシャツが、廃棄されていることになります。
さらに驚いたのが、ファッション業界は、石油・ガス産業に次いで、世界第2位の環境汚染産業だったことです。
残念ながら現在は、消費する服を廃棄するだけでなく、毎年購入する衣服の生産に、多くの資源を使います。
平均して、各家庭で毎年購入する服の量に対して、バスタブ1000杯もの水が必要になります。
ファッション業界がこの流れを変えるためには、いくつか方法があります。
まずは、リサイクルできるように、衣服をデザインすることです。
例えば、ライダースジャケットをリサイクルするためには、ただの布地に戻す必要があります。
細かく切り刻んで糸くずに戻し、新たに糸を紡いで布地を作ることで、新しい服を作り出します。
しかし、ボタンやファスナーなどの部品が、この問題を難しくします。
実際には、これらの部分を取り除くコストが、必要以上にかかってしまいます。
リサイクルするよりも、捨ててしまったほうが費用対効果が安くなることもあります。
この問題を防ぐため、デザインの段階でリサイクルしやすく作るのです。
次の方法は、生物分解です。
私たちが着る服は、3年程度の寿命になります。
服の寿命をたった9ヶ月延ばすだけで、廃棄する際の水を20〜30%減らせます。
服の中でも寿命が長いのは、アンダーウェアや靴下などです。
これらはリサイクルできませんが、生物分解できたらどうでしょう?
環境への負荷を大きく減らすことができます。
これらを作る素材を、100%オーガニックコットンなどの天然繊維へと変更するだけでいいのです。
もう一つ考えられるのは、服を染色する方法です。
現状では、有害な化学染料の10〜20%が、発展途上国の生産拠点の近くにある、水場に流れています。
こうした化学染料は、長期間衣服の染料をもたせる上で、有効なのです。
派手な赤いワンピースが長期間赤いままでいるのは、こうした化学物質のおかげです。
しかし、他の染料を使えたらどうでしょう?
スパイスやハーブが使えたら?
素材を染色できる食品は多くありますが、一般的な染料とは大きく違います。
よりユニークで、環境に優しい服が出来上がります。
時間が経つにつれて、色が変わるオリジナリティもあります。
色落ちするデニムのように、持ち主とともに変化していく服の一種になります。
2.4兆ドル規模のファッション業界は、非常に競争の厳しいところです。
大規模生産が可能な市場ですが、時が経つにつれてユニークさが増す服は、競争において非常に有利になるでしょう。
どのブランドもカスタマイズに力を入れています。
オンラインサービスの出現で、家にいながらカスタマイズできるサービスが増えています。
ナイキやアディダスは、何年も前から、オンラインでカスタマイズの注文を受けています。
ファッションに関するオリジナリティは、以前よりも求められています。
大規模生産をしながら、環境に優しい商品が作れれば、業界を大きく動かすことになるでしょう。
環境のことを考えることが、実利を考えることにも繋がります。
すべてを一挙に解決する方法はありませんが、服の寿命を念頭に置いて、服をデザインすることは可能です。
ファッション業界こそ、持続可能な将来を可能にする、実験的な試みや変化を喜んで受け入れるのに、最も適した業界なのです。
感想
全産業で最も環境汚染をしているのが、石油・ガス産業という事実には驚かないが、2位がファッション業界という事実には衝撃を受けた。
確かに、日常的に必要な物の中で最も飽きやすく、移り変わりが激しいものが服だ。
私も10代の頃から服が好きで、どれほど買っては捨ててを繰り返したか分からない。
特に裕福だったわけではないが、単純に服が好きだったので、若い頃は彼のように古着屋巡りをしていた。
20代は古着は買わなくなり、新品の服を買っていた。
30代になると次第に服の熱もおさまり、最近はファストファッションで簡単に済ませているが、それでも他の物よりも買っては捨ててを繰り返しているかもしれない。
これまでの購買履歴があると、服を買うといつか捨てることになるのが分かっているので厳選するようにはなったが、それでもゴミは出てしまう。
そしてこれは、私だけでなく、先進国共通の問題なのだろう。
服は85%が廃棄され、そのすべてがゴミなってしまうという。
その事実を知り、ファッション業界に携わっている若者であれば、彼のように疑問を感じることは当然のことだろう。
真正面からきちんと考えて、具体的な解決法を提唱しているところが素晴らしい。
ファッション業界もビジネス第一なので、リサイクルしやすい服をデザインするのは、前向きにならないだろう。
しかし、オーガニック素材は現在でもすでにあり、比較的な簡単な環境保護なので、これは拡げていくことが可能だろう。
デザイナーではない私たちとしては、できるだけオーガニック製品を買うことで、地球のゴミを少しでも減らして、環境保護に貢献することができる。
また、化学物質以外で染色する服も、環境保護に繋がるので積極的に選ぶといい。
デニムもそうだが、使うほど色落ちしたり味が出る服ってのは、オリジナリティが高く、愛直が湧いてくるから、個人的には好きなほうだ。
デニム以外でも色落ちする服をうまく流行らせれば、みんながファッションを楽しみながら環境保護ができるだろう。
ファストファッション全盛期の現代では、そう簡単なことではないだろうが。