世界中の優秀な人材を発掘できる【TED】在宅勤務がビジネス上有利な理由
「日本で生まれ育ち、現在はカリフォルニアに住んでいるような人だけでなく、世界のどこで生活して働き、目覚め寝る人だろうと、雇うことができます。」
Matt Mullenweg
概要
WordPress創業者であり、Automattic社のCEOでもあるマット・マレンウェッグが、TEDスピーカーに選出された。
在宅勤務が、いかにビジネス上有利か講演してくれた。
それでは早速、紹介していこう。
内容
オフィスで働くことの基本的な問題は、自分の作業環境をコントロールできないことです。
私はマット、Automattic社のCEOです。
WordPress.comやJetpack、WooCommerceなどを手がけています。
800名の社員がいますが、住んでいる場所はバラバラです。
そして、世界の67カ国に散らばっています。
カナダ、メキシコ、インド、ニュージーランド。
一箇所に定住しない人もいます。ノマドです。
キャンピングカーで暮らしていたり、Airbnbを使って旅をしていたり、彼らは週ごと、月ごとに新たな場所へ移動します。
Wi-Fiがちゃんと繋がれば、どこにいるかは気にしません。
この分散的な形態は、たまたまそうなったのではなく、はじめから意識して選択したことでした。
私が「遠隔勤務」という言葉を使わないのは、中心の人々とそうではない人々を、区別しているように感じるからです。
私は自分たちのやり方を、「分散型」と呼んでいて、みんなが対等な立場にいます。
社員が分散した形態というのは、会社を構成する最も効果的なやり方だと思います。
大事なのは、意識してそうすることです。
私がWordPressを立ち上げたとき、最初の20人の社員の多くが、一度も会ったことがありませんでした。
ずっとネット上で一緒にやってきた人たちだったのです。
その形を続けたいと思った理由は簡単です。
才能や知性というのは、世界中の均等に分散されていると思いますが、機会はそうではありません。
シリコンバレーは技術系の大企業が、同じ一つの池で釣りをしているような状態ですが、分散型な会社なら海全体で釣りをすることができます。
日本で生まれ育ち、現在はカリフォルニアに住んでいるような人だけでなく、世界のどこで生活して働き、目覚め寝る人だろうと、雇うことができます。
その人たちは、文化的に異なった考え方や、異なる生活体験をもたらしてくれます。
分散型にしようとした考えの元は、仕事のやり方について、自主性を与えたいとの考えがありました。
好きにスケジュールが組めて、みんな窓のある角部屋で仕事ができ、食べたいものが食べられ、音楽を流すのも静かな中でやるのも選べます。
部屋の温度も調節できます。
通勤時間を節約して、大切なことに時間を割り当てられます。
社員が分散した形態は、技術系企業に理想的なものですが、それで上手くいかない場合はどうするか?そんな質問もあります。
分散的な会社をつくるためには、いくつか方法があります。
まず、「すべてを記録すること」です。
どこにいて、どんなことを考えたかなど、すべてを記録しておけば、他の人がその先を引き継ぐことができます。
異なる時間帯にいる人ともやり取りできるようになりますし、組織の変化や人の入れ替わりにも対応することができます。
次に、「コニュニケーションをできるだけオンラインですること」です。
すべてが公開され共有されていれば、新人も速やかに学べます。
「いいツールを見つけること」
日常的なコミュニケーションやテレビ会議、プロジェクト管理などに使えるアプリやサービスがたくさんあります。
いま仕事のやり方を変えているものは、モノではなく、コンピューター上で使うものです。
協同作業を助けてくれるツールを色々使って見ることで、上手くいくものを見つけましょう。
「生産的な対面時間を設けること」
従来のオフィスでは、年に48週は一緒にいて、長くても3〜4週間だけ離れているという感じでしょう。
私たちはこれを逆にして、短時間で濃密な一緒の時間を設けています。
年に一度の大会合があって、1週間全社員がともに過ごします。
半分は仕事、半分は遊びです。
ここでの主目的は、人々の絆です。
別れるときは皆の意識が合っていて、同僚の間に深い結びつきができています。
1年の残りで協同作業をする時に、この理解と共感が生きてきます。
最後に、「各自が自分に合った仕事環境をつくれるような柔軟性を持つこと」です。
Automattic社では、コワーキング手当があって、コワーキングスペースのために使ったり、コーヒーショップから追い出されないようコーヒーを買えるようにしています。
シアトルにいるグループは、その手当を集めて釣り桟橋に仕事場を借りています。
自宅手当もあります。
そのお金を使っていい机や椅子、ディスプレイなどを買い、各自が生産的に仕事できる環境を整えます。
分散的な形態を導入している会社はまで少ないですが、今後十年か二十年のうちに、世界に影響を与えるような会社の9割は、そういう形態になっていると私は予想しています。
分散形態優先へと進化するにせよ、そういう会社に淘汰されるにせよ、次につくろうとしているものが何であるにせよ、どうすれば世界中の人材を動かし、自律性を与えられるかを考えてみてください。
みんなが働きたい場所で働きながら、全力で何かを一緒に作り上げられるように。
感想
WordPressの創業者が率いる会社が在宅勤務をメインにしていると聞いて、違和感は全くなかった。
それどころか、話を聞いているとあまりにもナチュラルなので、なぜオフィスというものが存在するのか、一瞬分からなくなったほどだ。
技術系の会社であれば、在宅勤務は導入できる。
それでは、営業はどうするかという問題になるのだろう。
営業もいつかはオンライン上ですべて終わらせるように、なるかもしれない。
実施、すでにBtoBでは、オンライン上の営業ツールが誕生してきている。
そして、BtoCの営業は、最後にIT化されていくのだろう。
それにしても、休暇時間の3〜4週間だけで会社を離れるのが一般的だが、(日本企業では2週間程度か)社員が集まるのが1週間程度で、残りの期間はすべて労働場所が自由という点には衝撃を受けた。
完全なる逆転の発想で、世界を変えるような企業のCEOは、考え方が違うと思わされた。
素晴らしい。
日本企業では考えられない発想だ。
彼は、世界に影響を与えるような会社の9割は、分散型企業になるという。
未来を感じさせる彼の話を聞いていると、その考えに説得力を感じる。
どれぐらい時間がかかるのかは不明だが、そして言語の壁は大きいが、日本もゆっくりと変わっていくだろう。