なぜ人は辛さを感じるのか?【TED】辛さの科学
「辛さは味覚とは違って、痛覚だ。辛いものは刺激的で美味しいが、同時に、体を攻撃することでもある。」
概要
TEDのローズ・エベレスが、辛さの科学について講演した。
なぜ、人は辛さを感じるのだろう?
そして、なぜ辛いものを食べるのだろう?
その理由を、分かりやすく紹介していこう。
内容
赤い唐辛子を食べると、なぜ口から火を噴くように辛いと感じる?
なぜ大量にワサビを食べると、涙目になるのだろう?
最も辛いスパイスは、どれぐらい辛いのだろう?
これらについて、少し、考えてみよう。
理由を解明する前に、まず、辛さとはなんだろうか?
辛さは味覚ではなく、甘味・塩味・酸味とは違う。
辛いと感じる時に何が起こっているのかというと、辛い食べ物の成分が、感覚神経を刺激している。
この神経を、ポリモーダル受容器という。
これは全身にあるもので、口や鼻にもあり、極度な熱さに反応する、侵害受容器と言える。
ということは、チリペッパーを食べると口中が燃えるように感じるのは、脳が実際に燃えていると感じているからだ。
これと逆の現象が、メンソール入りの食べ物を食べると起こる。
冷たいミント成分が、冷受容器を活性化するためだ。
これらの熱刺激受容器が活性化されると、危険な熱源との接触があったと感じて、それに伴った反応が起こる。
だからこそ、汗をかいたり、心臓の鼓動が早くなる。
唐辛子が引き起こすのは、闘争・逃走反応であり、体への脅威に対する反応と同じだ。
しかし、すべての辛い食べ物が、違う種類の辛さを持っている。
この違いは、食べ物に含まれている、成分タイプによって変わる。
カプサイシンとピペリンは、黒胡椒と唐辛子に含まれていて、アルキルアミドから構成されている。
そして、カプサイシンとピペリンは、口の中に滞留する。
一方、ワサビはイソチオシアネートで構成され、すぐに鼻腔にいく。
だからこそ、唐辛子を食べると口の中が燃えるように感じるに対し、ワサビを食べると鼻がツーンとする。
食べ物の辛さを測る尺度は、スコヴィル値という。
パプリカが0で、タバスコは1200〜2400。
最も辛い唐辛子は、トリニダーゴ・モルガ・スコーピオンと、キャロライナ・リーパー。
そのスコヴィル値は、150万〜200万にもなる。
なぜ、そこまでして人は辛いものを食べるのか?
人類がいつ唐辛子を食べ始めたかは、明確には分かっていない。
マスタードのような香辛料が、2万3000年前の工芸品と見つかったというデータがある。
しかし、その香辛料が使われたのは、食べ物のためなのか、医薬品のためなのか、分かっていない。
6000年前であれば、古い鍋に、炭化した魚や肉と一緒に、マスタードが見つかっている。
ある理論によると、人が食べ物に香辛料を入れたのは、バクテリアを殺すためだった。
香辛料が発達したのは暖かい気候の地帯が多く、微生物が活性化するエリアでもあったからだ。
しかし、なぜ私たちが唐辛子を食べ続けているのかは、いまだに不明だ。
辛いものを食べるということは、ジェットコースターに乗ってスリルを楽しむようなものだ。
すぐにくる感覚は不快であったとしても、刺激が得られる。
いくつかの研究によると、辛いものが好きな人は、アドレナリンが多く放出される、ギャンブルやスリルを好む傾向があるという。
辛さへの興味は、遺伝子学的でさえある。
もし、辛いものが好きで、辛さへの鍛錬を考えているのであれば、覚えておいて欲しい。
ある研究によると、どんなに辛いものに慣れても、痛みは全く変わらないそうだ。
ただ単に、痛みに我慢強くなるだけだ。
辛いものが好きな人は、痛みを痛みと感じていない傾向がある。
そして、痛みをむしろ好ましいものと捉えているところがある。
感想
辛さは、旨味などの味覚ではなく、痛覚だ。
脳が、燃えていると勘違いして、辛さを感じるようにできている。
だからこそ、汗をかいたり、鼓動が早くなったりする。
辛いもので美味しいものはあるし、刺激もある。
筆者も、ワサビや唐辛子が大好きだ。
香辛料の多いタイ料理や、中華料理、韓国料理と、何でも食べる。
トムヤムクン、キムチ、麻婆豆腐、すべて好きだ。
しかし、辛いものは体を攻撃する痛みでもあるので、ほどほどがいいかもしれない。
辛い食べ物に強い人は、単に我慢強くなっているだけらしい。
むしろ痛みを好ましいと思っているということは、Mっ気があるのかもしれない。
辛いものは美味しいと感じるし、刺激もあるが、体を痛めつけてしまうのであれば、ほどほどに楽しんだほうが良さそうだ。